建材カタログの価格更新を、生成AIで自動化―― 1週間かかっていた作業を半日へ。建築・住宅業界の生成AI活用事例
無料相談 / 定型業務のAI自動化
「毎回発生し、時間がかかり、ルールが決まっている業務」があれば、生成AIの有力な出発点です。カタログ更新・帳票処理・PDF読み取りなど、御社の業務に合わせた自動化テーマの整理から実装・定着支援までご提案します。
無料で相談する →- 建材・住宅関連のコンテンツを扱う企業では、メーカーのカタログ改定のたびに価格をExcelへ反映する作業が発生し、1メーカー分だけで約1週間を要していました。
- 価格更新は単純な転記ではなく、「複数仕様から最高価格を選ぶ」「付属品価格を加算する」「廃番商品を除外する」といった判断の連続です。
- 生成AIでPDF読み取り→構造化→ルール計算→新旧差分→Excel反映までを自動化し、約1週間の手作業を半日程度の確認・承認業務へ変えることを目指しました。
- ポイントはAIへの丸投げではなく、証跡帳票・例外検出・人の最終承認を組み合わせ、属人化していた業務を再現可能な標準プロセスにした点です。
「AIで業務を効率化したいが、自社の作業のどこから手をつければよいのかわからない」——多くの企業が抱えるこの悩みに対し、生成AIが特に効果を発揮するのは、「毎回発生し」「時間がかかり」「判断ルールが決まっている」作業です。今回取り上げるのは、まさにその条件に当てはまる建材・住宅業界の価格更新業務を、生成AIで自動化した事例です。
建材や住宅関連のコンテンツを扱う企業では、メーカーから届く商品カタログを確認し、型番やサイズごとの価格をExcelへ転記する作業が定期的に発生します。一見すると単純なデータ入力に見えますが、実際には多くの判断を伴い、数千件規模のデータを扱うため、担当者に大きな負担がかかっていました。本記事では、その課題の中身と、生成AIによる解決アプローチ、精度を担保する仕組み、導入の進め方までを整理します。
この事例の概要
まず、今回の事例の全体像を整理します。対象となったのは、建材・住宅関連のコンテンツを扱う企業で発生していた、メーカーカタログの価格更新業務です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 業界 | 建築・住宅・建材関連(コンテンツ制作/情報管理) |
| 対象業務 | メーカーカタログの価格情報をExcelへ反映する更新作業 |
| データ量 | 数千件規模の商品データ(1メーカーあたり約2,000行の価格一覧) |
| 従来の所要時間 | 1メーカー分で約1週間(改定時期は複数メーカーが同時発生) |
| 難しさ | 最高価格の選択・付属品の加算・廃番判定など、判断を伴う |
| 目標 | 約1週間の手作業を、半日程度の確認・承認業務へ |
1. 1週間かかっていた価格更新業務の中身
建材・住宅関連のコンテンツを扱うこの企業では、メーカーの商品カタログが改定されるたびに、価格情報をExcelへ反映する作業が発生していました。対象は数千件に及ぶ商品データです。
担当者はPDFカタログの価格表を目視し、型番やサイズを一つひとつ照合していました。複数の色・仕様の中から最も高い価格を選び、さらに付属品価格を加算して、所定の列へ入力します。この一連の作業は、単純なコピーではなく商品ごとの判断ルールを伴うため、1メーカー分の更新だけで約1週間を要していました。改定時期が重なると、複数メーカーの処理が同時に発生し、担当者の負荷は一気に高まります。
もう一つの難所——廃番商品の把握
この業務のもう一つの難しさは、廃番商品の把握です。新版カタログには「廃番」と明記されず、旧版にはあった商品が単に消えているだけ、という場合があります。名称や分類が変わるケースもあり、担当者は新旧のカタログを見比べながら、既存のExcelデータが現在も有効かどうかを一件ずつ確認していました。
つまりこの業務は、「価格を読む」だけでなく「変化に気づく」ことまで求められる、注意力と経験を要する作業だったのです。担当者が変われば精度や速度も変わりやすく、典型的な属人化業務になっていました。
2. なぜ「単純な転記」では終わらないのか
価格更新を自動化しにくくしていたのは、次のような判断や例外が数多く含まれていたためです。単なる文字認識(OCR)だけでは対応できない理由がここにあります。
| 難しさの種類 | 具体的な内容 |
|---|---|
| 目視での切り貼り | PDFカタログの価格表を人が目で追い、Excelへ手作業で転記していた |
| 複数条件からの選択 | サイズ・色・ガラス仕様など、複数条件の中から対象となる価格を判断する |
| 商品別の計算ルール | 「本体の最高価格+付属品価格」など、商品ごとに異なる計算が必要 |
| メーカー間の差異 | メーカーごとにページ構成や価格表の表現方法が異なる |
| 機械処理しにくい例外 | 型番の先頭ゼロ、名称変更、読取不能セルなどが混在する |
| 廃番の非明示 | 廃番が明記されず、新旧カタログの差分比較でしか気づけない |
| 複雑な反映先 | 複数シートへ反映するため、関数や参照関係も入り組んでいる |
| 証跡の不足 | 作業結果が正しいかを後から確認できる根拠が残らない |
これらは一つひとつは小さな判断ですが、数千件に積み重なると膨大な時間と集中力を消費します。逆に言えば、ルールとして言語化できる判断が多いため、生成AIとの相性が良い業務でもありました。
3. 生成AIによる自動化の全体像
そこで検討したのが、生成AIを使ったカタログ更新業務の自動化です。基本的な考え方は、PDFを読み込み、型番・サイズ・仕様別価格・付属品価格を構造化データに変換し、本体の最高価格と付属品価格を合算して、Excelへ反映できるCSVを生成する、というものです。
実際の打ち合わせでは、その場でカタログを読み込ませ、約2,000行の価格一覧を出力できる可能性を確認しました。人が1週間かけて行っていた読み取り・計算の大部分を、AIが短時間で下ごしらえできる見通しが立ったのです。
全体の処理は、下図のように「メーカーPDF → AI構造化 → ルール計算 → 新旧差分 → Excel反映」という5つの工程に整理できます。
4. 5つの処理フローを分解する
図の各工程で、AIが何をしているのかをもう少し具体的に見ていきます。
① メーカーPDF — 入力を整える
出発点は、メーカーから届くPDFカタログです。ここには価格表・サイズ・色・仕様といった情報が、メーカーごとに異なるレイアウトで掲載されています。まずはこのPDFを、ページや商品群といった扱いやすい単位に分割して読み取ります。一度にすべてを処理しようとせず、区切って読み込むことが精度向上の第一歩です。
② AI構造化 — 型番別に一覧化する
読み取った情報を、型番・サイズ・仕様別価格・付属品価格・参照ページといった項目に分解し、構造化データとして一覧化します。人間が見れば「表」として理解できる情報も、機械が計算・比較できる形に整えることで、後続の工程を自動化できるようになります。
③ ルール計算 — 最高価格に付属品を加算する
構造化したデータに対して、商品ごとの業務ルールを適用します。具体的には、複数の仕様・色の中から最高価格を算出し、そこに付属品価格を加算して最終価格を求めます。従来は担当者が頭の中で行っていた判断を、明文化されたルールとして再現する工程です。
④ 新旧差分 — 廃番・追加・名称変更を検出する
旧版と新版の構造化データを突き合わせ、廃番・追加・名称変更の候補を抽出します。これにより、「廃番と明記されないまま消えた商品」も差分として浮かび上がります。担当者が新旧カタログを見比べていた作業を、AIが一覧として提示する形に置き換えます。
⑤ Excel反映 — 所定の列・複数シートへ書き込む
最後に、計算・判定した結果を、指定されたExcelの列や複数シートへ自動で反映します。本体価格・付属品・仕様・差分一覧といったシート構成に合わせて出力するため、担当者は貼り付け直しや関数の再設定に追われる必要がなくなります。
5. 精度を担保する3つの仕組み
業務にAIを組み込むうえで最も重要なのは、「速いかどうか」よりも「信頼できるかどうか」です。この事例では、AIに一度ですべてを任せるのではなく、次の3つの仕組みで品質を担保しました。
仕組み1:証跡帳票 — 根拠をたどれるようにする
AIが出力した価格には、必ず参照ページ・抽出した数値・計算式をまとめた確認帳票を添えます。「この価格は、カタログの何ページの、どの数値から、どう計算されたのか」を人が後からたどれるようにすることで、数字を鵜呑みにせず検証できる状態を作ります。
仕組み2:例外処理 — 苦手な箇所を隠さない
型番の先頭ゼロ、読取不能セル、未掲載商品など、機械処理が苦手な箇所は例外として検出し、フラグを立てます。AIが「自信がない」と判断した部分を明示することで、確認すべき箇所が一目でわかり、見落としを防げます。
仕組み3:人の確認 — 例外と最終承認に集中する
人は、すべてを一から確認するのではなく、読取不能・低信頼・例外候補の箇所だけを確認して承認します。定型的で大量の処理はAIが担い、人は判断が必要なところに集中する。この役割分担が、スピードと信頼性を両立させる鍵になります。
6. 導入の進め方:PoCから段階拡張へ
このような自動化は、最初から大規模な専用システムを作ろうとすると、要件が固まらず頓挫しがちです。そこでこの事例では、実際のカタログとExcelを使うワークショップ型のPoC(概念実証)から始めるアプローチを取りました。
ステップ1:代表的な1商品群で精度を固める
まずは代表的な1商品群に絞り、抽出精度・計算ルール・例外条件を検証します。実データで「どこまで読めて、どこでつまずくか」を早期に把握することが、その後の設計の土台になります。
ステップ2:検証済みの手順をテンプレート化する
PoCで固めた抽出・計算・確認の手順を、再現可能なテンプレートとして整備します。これにより、担当者が変わっても同じ品質で処理できる状態を作ります。
ステップ3:対象メーカー・カテゴリへ段階的に拡張する
テンプレートが安定したら、対象メーカーや商品カテゴリ、複数シート連携へと段階的に広げていきます。小さく検証し、成果を確認しながら横展開することで、リスクを抑えながら適用範囲を拡大できます。
この「小さく試して、確実に広げる」進め方は、建材業界に限らず、判断を伴う定型業務にAIを導入する際の基本形です。導入全体の考え方は「企業の生成AI活用事例30選|部門別・業務別にわかりやすく解説」もあわせて参考にしてください。
7. 得られた成果
この取り組みが目指したのは、約1週間の手作業を、半日程度の確認・承認業務へ変えることです。AIが定型処理を担い、人は例外判断と最終承認に集中する体制へ移行します。
| 観点 | Before(従来) | After(AI活用後) |
|---|---|---|
| 作業時間 | 1メーカーあたり約1週間 | 半日程度の確認・承認業務へ |
| 作業の性質 | 読み取り・計算・転記を人が実行 | AIが処理し、人は例外と承認に集中 |
| 属人性 | 担当者の経験・注意力に依存 | 再現可能な標準業務へ |
| 根拠の追跡 | 作業結果の検証が難しい | 証跡帳票で参照元・計算式を追跡可能 |
| 廃番の把握 | 新旧カタログを目視で比較 | 差分検出で候補を自動一覧化 |
重要なのは、これが単なる時間短縮ではないという点です。特定の担当者の頭の中にあった判断基準を、ルールと手順として外に出し、誰が担当しても同じ品質で回せるようにする——つまり属人化していた更新業務を、再現可能な標準プロセスへ変える取り組みだといえます。
まとめ:時間短縮ではなく「再現性」を得る取り組み
建材カタログの価格更新は、「毎回発生し」「時間がかかり」「判断ルールが決まっている」という、生成AIが効果を発揮しやすい条件を備えた業務でした。PDFの読み取りから構造化、ルール計算、新旧差分の検出、Excelへの反映までを一気通貫で自動化することで、1週間かかっていた作業を半日程度の確認・承認業務へと変える見通しが立ちました。
ただし、そこで鍵になるのはAIへの丸投げではありません。証跡帳票で根拠を残し、例外を検出して隠さず、人が最終承認する——この3点を組み合わせることで、初めて実務で信頼できる仕組みになります。そして、いきなり大規模なシステムを作るのではなく、実データを使うワークショップ型PoCから小さく始め、テンプレート化して段階的に広げることが、着実に成果を出す進め方です。
もし自社にも「毎回発生し、時間がかかり、判断ルールが決まっている」定型業務があるなら、それは生成AI活用の有力な出発点になります。まずは一つの業務を切り出し、実データで試してみることをおすすめします。
※ 本記事は、建材・住宅関連のコンテンツを扱う企業での生成AI活用事例をもとに、内容を匿名化・一般化して構成しています。記載の所要時間・行数・効果は特定条件下での例であり、成果を保証するものではありません。実際の導入では、対象データやルールに応じた個別の検証が必要です。図中のExcel画面・数値はイメージです。記載のサービス名・製品名は各社の商標または登録商標です。
よくある質問
カトルセの支援サービス
カタログ更新・帳票処理・PDF読み取りなど、判断を伴う定型業務の自動化を自社で実践・定着させたい場合は、カトルセの法人向けサービスをご活用ください。人材育成から開発、社内定着の伴走までワンストップで支援します。
