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FDE研修は助成金の対象?2026年8月改正後の要件と実質負担

公開日 / 最終更新 / 読了時間 約22分/ 執筆 代表取締役 橋本/ カテゴリ 専門家解説
FDE研修のうち助成金の対象になる研修と、対象外になる現場実装の切り分け

「FDE(現場実装型エンジニア)を社内で育てたい。そのFDE研修に助成金は使えるのか」「2026年8月の改正で、生成AI研修は助成金の対象外になったと聞いた」。この2つのご質問を、SIerの事業責任者や、事業会社のDX推進・人事のご担当者から、2026年の秋に入ってとくに多くいただきます。商談では「助成金を使っても高い」「研修の効果が見えない」という声も根強く聞きます。

結論から言えば、FDE研修は、受講者の担当職務に直結する実装演習を中心に10時間以上のOFF-JT(通常の業務から離れて行う訓練)として設計し、訓練開始の1か月前までに計画届を出せば、人材開発支援助成金の対象になり得ます。2026年8月3日の改正は、汎用的なAIリテラシー研修やプロンプト講座を対象から外し、職務に直結する訓練に対象を絞る内容でした。業務への実装を学ぶFDE研修は、むしろこの基準に合わせやすい研修です。ただし、FDE育成の中心である「実案件での実装」は研修(OFF-JT)ではないため、助成の対象外です。

この記事では、FDE研修のどこまでが助成対象になるのかを単元ごとに判定し、1人あたりの上限まで入れた実質負担の計算、計画届に書く「職務との関連」の文例、2027年3月末の期限から逆算した日程までを一通り解説します。制度の数字は、厚生労働省の支給要領(令和8年8月3日版)などの公表資料に基づいています。

自社のFDE研修が助成対象になりそうか、先に確かめたい方へ

対象にしたい職務と人数が決まっていれば、計画届に書く「職務との関連」とカリキュラムの組み方を、30分の無料相談で一緒に確認します。概算の実質負担は助成金シミュレーターですぐに出せます

この記事の要点(TL;DR)
  • FDE研修は、職務に直結する実装演習を中心に10時間以上のOFF-JTとして設計し、訓練開始の1か月前までに計画届を出せば、人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)の対象になり得ます。
  • 2026年8月3日以降に提出する計画届では、汎用的なAIリテラシー研修・プロンプト講座は対象外です。新しい基準が当てはまるかは、研修の実施日ではなく計画届の提出日で決まります。
  • 中小企業の経費助成率は75%ですが、10時間以上100時間未満の訓練は1人30万円が上限です。高単価で短時間の伴走型プログラムでは、受講料の約35%しか戻らない例もあります。
  • 実案件での実装(OJT)は助成の外です。研修と現場実装は、契約と費用を分けて設計します。
  • 事業展開等リスキリング支援コースは令和8年度(2027年3月末)までの期間限定です。年末年始を挟むため、2026年12月上旬の計画届提出が現実的な目安になります。

結論:FDE研修が助成対象になる条件・ならない条件

2026年8月の改正後、判断の軸は1つです。「受講者の職務に直接必要で、訓練後の業務でそのまま使える内容か」。研修の名前に「AI」「DX」「FDE」が入っているかどうかは関係ありません。中身が受講者の職務とつながっているかが問われます。

FDE研修でよくある中身を、この軸で判定すると次のようになります。

研修の中身判定の目安理由
受講者の担当職務(顧客システムの開発、経理の請求書処理など)を題材に、AIを組み込む設計と試作を演習する対象になり得る特定の職務に直接必要な専門的な知識・技能
SIerのエンジニアが、顧客業務へのRAG・AIエージェントの実装手法を、研修用の環境で学ぶ対象になり得る新サービスの提供(事業展開)やDX化に必要な技能
全社員向けに、生成AIの基本操作と汎用的なプロンプトの書き方を学ぶ対象外(8月3日以降の計画届)職業人に共通して必要な、汎用的な内容
DXの概念、AIの動向、他社事例の紹介が中心対象外間接的な知識や事例紹介に終始している
研修の名目で、自社の本番システムやPoCを開発する対象外になるおそれOFF-JTではなく通常業務(OJT)と見なされうる
研修後の現場での実装の伴走・常駐支援対象外訓練ではなく業務の支援
実訓練時間が10時間未満、または訓練開始後に計画届を出した対象外要件を満たさない

厚生労働省のリーフレット「令和8年8月3日からの変更点について」は、対象になる例として「営業担当者が、生成AIを使って商品提案書の構成案の作成・文章生成・修正方法を学ぶ訓練」を、対象外の例として「生成AIを利用するための汎用的なプロンプトの作り方を学ぶ訓練」や「DXの概念・デジタル技術の概要・データ活用の考え方を学ぶ訓練」を挙げています。FDE研修に読み替えると、「AIの使い方」を広く学ぶ研修は外れ、「この職務のこの作業にAIを組み込む方法」を学ぶ研修が残る、ということです。

なお、表はあくまで判定の目安です。対象になるかどうかを最終的に判断するのは、計画届を受け付ける都道府県労働局です。「必ず対象になる」と言い切れる研修はありません。

FDE研修とは:一般的なAI研修との違いを30秒で

FDE(Forward Deployed Engineer=現場実装型エンジニア)は、AIを作る人ではなく、AIを現場で使える状態にする人です。カトルセでは、FDEの役割を次の6つに分けて考えています。

  1. 業務課題の整理
  2. AIで解ける形への分解
  3. 素早い試作
  4. 本番運用の設計
  5. 現場への定着
  6. 効果の測定と改善

一般的な生成AI研修が「AIの使い方」を学ぶのに対して、FDE研修は「業務にAIを組み込み、使われ続ける状態にする方法」を学びます。受講者は大きく2つに分かれます。顧客の業務にAIを実装するエンジニア向け(SIer・SESの技術者、社内の開発担当)と、自部署の業務にAIを組み込む業務部門向け(経理・営業・人事などの担当者)です。海外のFDEは、技術側と業務側が2人1組で現場に入る形が知られています。どちらを育てるかで、計画届に書く「対象職務」が変わります。役割の詳しい説明は「FDEとは?AI導入を『作って終わり』にしない現場実装型エンジニアの役割」で解説しています。

FDEの仕事は、研修室の中だけでは身につきません。カトルセ自身の例を挙げます。当社は営業管理のCRM(顧客管理システム)を Claude Code で開発・運用しています。機能の実装やテストはAIエージェントに任せ、人は指示書の整備とレビュー、本番に出すかどうかの判断に責任を持ちます。「AIに任せる範囲」と「人が責任を持つ範囲」を決める力は、実際に運用してはじめて身につきます。だからこそFDE育成は、研修(OFF-JT)と現場での実装(OJT)を組み合わせて設計する必要があり、その切り分けが助成金の可否にも直結します。

2026年8月改正でFDE研修に効く4つの変更点

人材開発支援助成金は2026年に入って4回改正されました(3月2日・4月8日・5月14日・8月3日)。ここでは、FDE研修の設計に直接効く点に絞って整理します。改正の全体像は「AI研修の助成金(8月改正の変更点)」で詳しく解説しています。

1つ目は、汎用的な訓練の除外です。 DX化・GX化に伴う訓練であっても、「職務に間接的に必要となる知識・技能」や「職業人として共通して必要となるもの」を習得させる訓練は対象外であることが明記されました。ここで押さえておきたいのは、改正によって生成AI研修が新たに対象になったわけではない、という点です。職務に直結する生成AI研修は改正前から対象になり得ました。8月の改正は、対象を絞り、基準をはっきりさせる方向の変更です。

2つ目は、新基準が当てはまる単位です。 改正後の支給要領は、計画届の提出日が令和8年8月3日以降のものに適用されます。8月2日までに提出した計画届には従前の支給要領が適用され、8月3日以降の提出でも、8月2日までに教育訓練機関と契約・申込みをしていた場合などには経過措置があります(契約日・申込日が分かる書類を計画届に添付)。これから計画する研修は、すべて新基準で考えるのが安全です。

3つ目は、受講回数の上限です。 同じ労働者が助成を受けられる訓練は1年度3回まで、そのうちeラーニングは1年度1回までとされています。FDE育成を「基礎編・実装編・運用編・応用編」のような4段階のプログラムに分けると、同じ受講者は年度内に3つまでしか助成されません。

4つ目は、審査の厳格化です。 2026年5月14日からは、支給申請のときに「受講料等の価格設定に関する疎明書(様式第28号)」の提出が必要になりました。助成金を使う場合だけ受講料を高くしていないかを確認するためのものです。8月の改正では、不正受給の公表のルールも厳しくなりました。背景には、訓練会社が関与した不正受給として191事業所・約20億円が認定された事案があります。返金やキャッシュバックで会社の負担が実質的に減る経費は、もともと助成の対象外です。

FDE研修で使える助成コースの選び方

人材開発支援助成金には、令和8年度時点で6つのコースがあります。FDE研修で検討する価値があるのは主に次の3つで、東京都内の中小企業は都の制度も候補になります。

制度経費助成率(中小/大企業)賃金助成(1人1時間、中小/大企業)経費助成の上限(1人1訓練)期限FDE研修での使いどころ
事業展開等リスキリング支援コース75%/60%1,000円/500円10〜100時間未満:30万円/20万円、100〜200時間未満:40万円/25万円、200時間以上:50万円/30万円令和8年度まで本命。SIerの新サービス立ち上げ(事業展開)、事業会社の社内AI実装(DX化)
人への投資促進コース(高度デジタル人材訓練)75%/60%1,000円/500円コースの定めによる令和8年度までITSS・DSS-Pのレベル3〜4に相当する、エンジニア向けの高度な実装訓練
人材育成支援コース(人材育成訓練)45%/30%(賃上げなどの要件で60%/45%)800円/400円(同1,000円/500円)10〜100時間未満:15万円/10万円期限なし上の2つの要件に合わないときの受け皿
東京都 DXリスキリング助成金4分の3―1人1研修7万5,000円、1社年度100万円申請は2027年2月28日まで都内の中小企業が、3時間以上10時間未満の入門研修を受ける場合

本命の事業展開等リスキリング支援コースは、名前から「新規事業がないと使えない」と思われがちです。実際には、新規事業の立ち上げに伴う訓練のほかに、事業展開を行わない企業が社内のDX化に取り組む場合の訓練も対象に含まれています。どの型で計画を書くかは、読者の立場で変わります。

  • SIer・SESの場合:顧客企業の業務にAIを組み込む「AI実装支援」を新しいサービスとして提供する、という事業展開の型で書きやすくなります。
  • 事業会社の場合:自社の業務にAIを組み込むDX化の型で書きます。新規事業は要りません。
  • 配置転換を伴う場合:システム部門の担当者をFDEの役割に就けるなど、社内の人事・人材育成の計画に基づく訓練の型が2026年3月2日に加わりました。中小企業がこの型を使うときは、認定経営革新等支援機関(商工会議所・金融機関・税理士など)の事前確認が必要です。

なお、経済産業省の「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」や教育訓練給付は、個人が講座を受けるときの制度です。会社が費用を負担するFDE研修には使えません。助成金の制度全体の概要は「生成AI研修を助成金で受ける方法」にまとめています。

いくら戻るか:1人あたりの上限まで入れて計算する

「中小企業は75%」という数字だけを見ると、受講料の4分の3が戻るように思えます。実際には、経費助成に1人1訓練あたりの上限があるため、受講料が高く訓練時間が短いほど、戻る割合は下がります。計算式は次の2つです。

  • 経費助成(1人)=「受講料×助成率」と「時間区分ごとの1人あたり上限」の小さいほう
  • 賃金助成=1時間あたりの単価×所定労働時間内に受講した実訓練時間×人数

対象経費は税込みの額で計算します。次の表は、事業展開等リスキリング支援コースで、1人あたりの金額を4つのケースで試算したものです(全員が8割以上出席、所定労働時間内に実施、通学または同時双方向のオンラインで実施した場合)。

ケース受講料(税込・1人)実訓練時間中小企業の助成合計受講料比大企業の助成合計受講料比
A ライブ型FDE研修40万円60時間36万円
(経費30万+賃金6万)
90%23万円
(経費20万+賃金3万)
58%
B 1on1伴走型(3か月・12回)90万円12時間31.2万円
(経費30万+賃金1.2万)
35%20.6万円
(経費20万+賃金0.6万)
23%
C 長時間ブートキャンプ100万円200時間70万円
(経費50万+賃金20万)
70%40万円
(経費30万+賃金10万)
40%
D 業務部門向け職種別研修39.6万円11時間30.8万円
(経費29.7万+賃金1.1万)
78%20.55万円
(経費20万+賃金0.55万)
52%

表から読み取れることは3つです。1つ目に、高単価・短時間の伴走型ほど「75%」から遠ざかります(ケースB)。2つ目に、大企業は上限が強く効くため、どのケースでも受講料の6割に届きません。3つ目に、訓練時間が100時間・200時間の区分に上がると上限も上がるため、長時間の研修は戻る額が大きくなります(ケースC)。なお、賃金助成は受講中の給与への補填で、受講料の値引きではありません。表の割合は、受講料の大きさと比べた参考値です。

ケースDは、カトルセの職種別AI研修(11時間・36万円/1名(税抜))を中小企業で1名が受講した場合です。経費助成297,000円(396,000円×75%)と賃金助成11,000円(11時間×1,000円)の計308,000円が支給されると、受講料に対する支払いの負担は88,000円になります。消費税の控除を受けられる場合の実質の負担は52,000円です。

SIerは、稼働の機会損失まで入れて判断します。 仮に月単価80万円(160時間換算で1時間5,000円)のエンジニアが60時間の研修に出ると、売上の機会は約30万円減ります。ケースAの中小企業の自己負担(4万円)より、こちらのほうが大きくなります。SIerの経営判断では「助成金でいくら安くなるか」よりも、「研修後の単価や受注の増加で、いつ回収できるか」を先に置くほうが判断を誤りません。

eラーニングで実施すると、賃金助成は出ず(経費助成のみ)、1年度1回の枠も使います。同じFDE研修でも、実施方法で実質負担が変わる点に注意してください。

自社の人数・企業規模で実質負担を試算したい方へ

研修プラン・企業規模・受講人数を選ぶだけで、経費助成と賃金助成を含めた実質負担をその場で計算できます。稟議書に貼れる数字を先に出しておくと、社内の検討が早く進みます

改正後も対象になるFDE研修カリキュラムの作り方

FDE研修を助成の対象にするための設計は、「職務に直結した訓練として設計する」の一言に尽きます。具体的には、FDEの6つの役割を、受講者の職務の作業に当てはめて演習に落とします。

FDEの役割を「職務の作業」と「演習」に落とす

FDEの役割研修での演習の例OFF-JTに入れやすいか設計のポイント
業務課題の整理受講者の担当業務を工程に分け、時間と手戻りを数える入れやすい題材は受講者自身の職務にする
AIで解ける形への分解工程ごとに、AIに任せる部分と人が判断する部分を決める入れやすい判断の基準を文書にして提出させる
素早い試作研修用の環境で、RAG・AIエージェント・ワークフローの試作品を作る入れやすい(研修用の環境で)自社の本番システムは開発しない
本番運用の設計権限・ログ・人による確認・費用の上限を設計書にまとめる入れやすい自社の運用ルールに沿った設計書を課題にする
現場への定着実際の部署に展開し、使われ方を見ながら直す入れにくい(OJT)研修とは別の契約で伴走する
効果の測定と改善削減時間や品質の試算の型を学ぶ(研修)/実運用での測定(業務)一部試算の型までを研修に入れる
(参考)生成AIの一般知識・汎用的なプロンプト―単独では対象外職務の演習に必要な範囲だけに絞る

この表は、計画届に添付するカリキュラムの下書きとしてそのまま使えます。カトルセの研修も、ライブ形式・全コマ演習で、受講者が自分の業務を題材に成果物を作る「AI Lab」の時間を中心に組んでいます。研修用の環境で手を動かすので、自社の本番システムを触らずに実装の型を身につけられます。

研修(OFF-JT)と現場実装(OJT)は契約を分ける

事業展開等リスキリング支援コースが対象にするのは、OFF-JTだけです。FDE育成の肝である「実案件での実装」は、通常の業務の中で行うOJTにあたり、助成されません。研修の名目で自社のPoCや本番ツールを作らせると、OFF-JTに当たらないと判断されるおそれもあります。

そこでおすすめするのが、次の3段の組み方です。

FDE育成を研修、現場実装、効果確認の3段で組み、研修だけを助成金の対象にする流れ
FIG.1研修(OFF-JT)と現場実装(OJT)は契約を分ける
  1. 研修(OFF-JT・助成の対象):10時間以上の実装演習。研修用の環境と教材の課題で、受講者の職務に沿って学ぶ。
  2. 現場での実装(OJT・自費):研修の最終回で残した「自社業務の実装課題」を、実際の業務として本番化する。伴走はAI顧問や生成AI開発として、研修とは別の契約・別の請求にする。
  3. 効果の確認:削減時間や品質の変化を、研修前に決めた指標で測る。

伴走の費用を訓練経費に混ぜないことが大切です。混ぜると、経費の切り分けで書類に不備が出やすくなります。ツール導入だけでは定着しません。使う人を育て、社内に型を残すところまでを、研修と伴走の組み合わせで設計します。研修の効果は満足度ではなく、業務の変化で測ります。そして、その変化は研修後90日の運用で決まります(詳しくは「AI研修を実施しても現場が変わらない理由」)。

1年度3回の上限を踏まえて組む

同じ受講者が助成を受けられる訓練は1年度3回までです。段階制のプログラムは、1本の訓練にまとめるか、3本以内に収めます。eラーニングの予習を入れる場合は、1年度1回の枠を使うことを前提に1本だけにします。

計画届に書く「職務との関連」の文例

8月の改正後、計画届で最も問われるのは「どの職務の、どの作業に、訓練の何を使うのか」です。次の文例は、計画書の記載や社内の稟議にそのまま使える形にしています。自社の職務名と人数に置き換えてお使いください。

エンジニア向け(SIer・SESの場合)

【対象職務】システム開発部で、顧客企業の業務システムの設計・開発を担当するエンジニア(〇名)
【事業展開の内容】顧客企業の業務に生成AIを組み込む「AI実装支援サービス」を新たに提供する
【訓練で習得する知識・技能】顧客業務の分析とAI適用箇所の特定、RAG・AIエージェントの設計と試作、
 精度と費用の評価方法、本番運用の設計(権限・ログ・人による確認)
【訓練後の活用】訓練終了後、受講者は〇〇年〇月以降の案件で、顧客業務へのAI組み込みの
 要件定義・設計・実装を担当する

業務部門向け(事業会社の場合)

【対象職務】経理部で、月次決算の仕訳確認と支払処理を担当する従業員(〇名)
【DX化の内容】請求書の読み取りと仕訳候補の作成に生成AIを使い、確認と承認の手順を見直す
【訓練で習得する知識・技能】自部署の業務の分解とAI適用箇所の特定、生成AIツールとワークフロー
 による処理の自動化、出力の検証方法、運用手順書の作成
【訓練後の活用】訓練終了後、受講者は月次決算業務で、請求書処理の自動化を運用・改善する

対象外と判断されやすい書き方

・全社員のAIリテラシー向上のため
・DX推進の機運を高めるため
・生成AIの基本的な使い方とプロンプトの書き方を学ぶ

ここに挙げた文例は、記載の考え方を示すためのものです。受理や支給を約束するものではありません。様式と記載欄は版によって変わるため、最新の様式と管轄の労働局の案内に合わせてください。

申請の流れと、2027年3月末から逆算したスケジュール

助成金は後払いです。研修費はいったん全額を会社が支払い、研修の終了後に申請します。流れは次の6段階です。

STEP 1対象者と職務を決める

受講者(雇用保険の被保険者)と、その職務の中でAIを組み込む作業を決めます。ここが曖昧なままでは、計画届の「職務との関連」が書けません。

STEP 2カリキュラムを職務直結で設計する

前の章の対応表を使い、実訓練時間が10時間以上になるように組みます。移動時間や対象外の内容は実訓練時間に数えないため、余裕を持たせます。

STEP 3計画届を出す

訓練開始日の6か月前から1か月前までに、管轄の都道府県労働局へ提出します。開始日の1か月前を1日でも過ぎると、原則として対象外です。内容を変えるときは、訓練開始の前日までに変更届を出します。

STEP 4研修を実施する

所定労働時間内に実施し、出欠と受講時間を毎回記録します。受講時間が実訓練時間の8割に届かない受講者は対象外になります。時間外や休日に行った研修には、賃金助成が出ません。

STEP 5研修費を全額支払う

支給申請の日までに、研修費を会社が全額支払います。領収書や振込の控えを保管します。

STEP 6支給申請をする

訓練終了日の翌日から2か月以内に支給申請をします。審査には数か月かかるのが一般的で、入金はその後です。

2026年10月から動き始める場合、年末年始の閉庁(12月29日〜1月3日)と書類の差し戻しを見込むと、次の日程が現実的です。

2027年3月末の期限から逆算した、FDE研修の計画届提出から支給申請までの日程
FIG.22027年3月末の期限から逆算したスケジュール
時期やること
2026年10月対象者と職務を決める。計画の型(事業展開/DX化/人事・人材育成計画)を決める。研修会社を比べる
2026年11月カリキュラムを確定し、契約する。中小企業が人事・人材育成計画の型を使う場合は、認定経営革新等支援機関の確認を受ける
2026年12月上旬計画届を提出する(期限は開始の1か月前だが、6〜8週間前を目安にする)
2027年1月中旬〜2月研修を実施し、出欠と時間を毎回記録する
2027年3月研修を修了する(3月31日より前)
修了日の翌日から2か月以内支給申請をする

準備がすでに整っている場合は、10月中に計画届を出せば11月中旬からの開始も可能です。一方で、令和8年度中に「計画届の提出」「訓練の開始」「訓練の修了」「支給申請」のどれを終えていればよいのかについて、2026年10月時点で明確な文言を確認できていません。年度末に近い日程を組む場合は、管轄の労働局に事前に確認してください。2027年4月以降の制度は、厚生労働省が人材開発支援助成金全体で602億円(令和8年度当初予算は539億円)の概算要求をしていますが、同じコースが同じ率で続くかは決まっていません。

助成金ありきで失敗する7つのパターン

助成金はFDE研修の費用を下げる有力な手段ですが、助成金を前提に計画を組むと、次のような失敗が起きます。

  1. 計画届の提出が1か月前を過ぎた:開始を1週間後ろにずらすほうが、助成を失うより損が小さくなります。
  2. 出席が8割を切った:多忙な現場のエンジニアほど起きやすい失敗です。研修日は業務の繁閑を見て、先に押さえておきます。
  3. 汎用研修をFDE研修と呼び替えた:全社員向けの「AI概論+プロンプト」は、8月3日以降の計画届では対象外です。
  4. 段階を分けすぎて回数の上限に当たった:1年度3回、eラーニングは1回までです。
  5. 「実質無料」「キャッシュバック」付きの提案に乗った:会社の負担を実質的に減らす経費は対象外で、悪質な場合は不正受給として社名が公表されます。
  6. 研修の名目で本番の開発をさせた:OFF-JTに当たらないと判断されるおそれがあります。本番化は伴走(OJT)で行います。
  7. 研修後に実装する場がなかった:FDE研修に固有の失敗です。案件・社内テーマ・権限・データが用意されていないと、身につけた技能が使われず、助成の有無に関係なく投資を回収できません。

研修会社を選ぶときは、次の質問で確かめると安心です。そのまま見積もり依頼のメールに貼って使えます。比較の観点は「生成AI研修の相見積もり完全ガイド」でも詳しく解説しています。

・このカリキュラムは、受講者のどの職務の、どの作業に直結しますか
・演習は研修用の環境で行いますか。自社の本番システムを触る内容はありますか
・実訓練時間は何時間ですか。実訓練時間に数えない時間はどれですか
・出欠と受講時間の記録、領収書、価格設定の疎明に必要な資料を出してもらえますか
・助成金を使う場合と使わない場合で、受講料は同じですか
・返金、キャッシュバック、無償の付帯サービスはありませんか
・研修後の現場実装の支援は、研修とは別の契約になっていますか

なお、助成金の申請手続きを報酬を得て代行できるのは、社会保険労務士だけです。申請は事業主の責任で行います。「申請はすべてこちらでやります」とうたう営業には注意してください。

よくある質問(FAQ)

FDE研修は人材開発支援助成金の対象になりますか?
要件を満たせば対象になり得ます。受講者の職務に直結する実装演習を中心に、10時間以上のOFF-JTとして設計し、訓練開始の1か月前までに計画届を出すことが前提です。最終的な可否は労働局の審査で決まります。
新規事業がなくても、事業展開等リスキリング支援コースは使えますか?
使えます。このコースは、新規事業の立ち上げに伴う訓練のほか、事業展開を行わない企業が社内のDX化に取り組む場合の訓練も対象にしています。自社業務へのAI実装を学ぶFDE研修は、DX化の型で計画を書けます。
Claude Code やRAG・AIエージェント開発の研修も対象ですか?
受講者の職務に直接必要な実装技能として設計されていれば、対象になり得ます。ツールの名前ではなく、どの職務のどの作業に使うかが判断の軸です。研修の名目で自社の本番システムを開発させる内容は、OFF-JTに当たらないと判断されるおそれがあるため、研修用の環境での演習にします。
SESで客先に常駐しているエンジニアや、業務委託のエンジニアも対象ですか?
対象者は、申請する会社が雇用している雇用保険の被保険者です。SES企業が自社の社員に受講させる場合は、SES企業が申請します。業務委託やフリーランスの方は、雇用保険の被保険者でないため対象になりません。個別の扱いは管轄の労働局に確認してください。
eラーニングのFDE講座でも助成されますか?
経費助成の対象にはなり得ますが、賃金助成は出ません。また、同じ受講者がeラーニングで助成を受けられるのは1年度1回までです。実装の演習が中心になるFDE研修は、講師とやり取りできる同時双方向のオンラインか、集合形式のほうが向いています。
2027年4月以降も同じ助成は受けられますか?
2026年10月時点では決まっていません。事業展開等リスキリング支援コースは令和8年度までの期間限定です。厚生労働省は令和9年度に向けて人材開発支援助成金全体の予算を増額要求していますが、同じコースが同じ率で続くかは未定です。
研修中の給与と、研修費の支払いはどうなりますか?
研修は所定労働時間内に行い、その時間の給与は通常どおり会社が支払います。賃金助成は、その負担の一部を1時間あたりの定額で補うものです。研修費は支給申請の日までに会社が全額支払い、助成金は審査の後に支給されます。

まとめ

  • FDE研修は、職務に直結する実装演習を中心に10時間以上のOFF-JTとして設計すれば、2026年8月改正後も人材開発支援助成金の対象になり得ます。
  • 1人あたりの上限があるため、戻る額は「75%」より小さくなることがあります。高単価・短時間の伴走型と、大企業は特に注意が必要です。
  • 実案件での実装は助成の外です。研修と伴走を分けて設計し、令和8年度末の期限から逆算して、12月上旬までに計画届を出せる日程を組みましょう。

計画届に添付できるカリキュラムを、職務に合わせて作りたい方へ

カトルセの研修は、2026年8月改正を踏まえて職種別・ライブ形式・実務直結型で設計しています。受講者の職務に合わせた演習の対応表と時間割は、30分の無料相談でサンプルをご覧いただけます。研修後の現場実装は、AI顧問による伴走で支援します。助成金については、研修計画と申請資料づくりを支援し、手続きは提携の社会保険労務士をご紹介します

※本記事は、2026年10月2日時点で公表されている厚生労働省の資料(人材開発支援助成金 事業展開等リスキリング支援コース 支給要領〔令和8年8月3日版〕、リーフレット「令和8年8月3日からの変更点について」など)に基づいています。助成の可否と金額は、都道府県労働局の審査で決まります。助成金は後払いで、研修費はいったん全額の支払いが必要です。対象者は原則として雇用保険の被保険者です。試算は単純化した概算で、交通費・欠席・消費税の扱いの違いなどは含みません。助成率・要件は変更される可能性があるため、計画・申請の前に、必ず厚生労働省・労働局の最新資料をご確認ください。

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この記事の執筆者

K.H

橋本 健太郎

株式会社カトルセ 代表取締役

生成AI研修・AI開発・AI顧問・PM/PMO支援を提供。累計2,000名以上のAI研修を支援し、大手企業の生成AI活用、ローカルLLM/RAG/AIエージェント導入、業務改善プロジェクトに携わる。実務に直結する「使えるAI活用」を一貫して伝えている。