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AI研修の稟議書の書き方|今期は少人数で先行し来期に広げる、効果の示し方と年内に決めること

公開日 / 読了時間 約14分 / 執筆 代表取締役 橋本 / カテゴリ 専門家解説
AI研修の稟議書の書き方。今期は少人数で先行し、来期に広げる。稟議書の7項目、測れる効果の指標、助成金の期限から逆算した決裁の目安
TL;DR / この記事の要点
  • 決裁者がAI研修の稟議で見るのは、何の業務に効くか・いくらまで使うか・効果をどう確かめるかの3つです。効果の数字を約束するより、測り方と判定日を書くほうが通りやすくなります。
  • 稟議書には目的・対象者・内容・費用・効果の測り方・リスクと対策・比較した他の選択肢の7項目を書きます。記入例をそのまま下敷きにできます。
  • 今期の予算が無いときは、同じ職務の数名で先に受けて測り、その結果を来期の予算の根拠にする段階の切り方が現実的です。先行の稟議に「来期に広げるかを決める日と条件」まで書いておきます。
  • 人材開発支援助成金を使う場合、計画届の期限は訓練開始日の6か月前から1か月前までです。計画届の前に研修の内容・日程・受講者を決めておく必要があるので、1月に始めるなら12月の前半、2月初めに始めるなら年内に決裁を終えるのが目安です(制度上の期限ではなく、カトルセの考え方です)。

「AI研修をやりたいが、今期の予算に入っていない」「稟議で費用対効果を聞かれて止まっている」。2026年の秋以降、カトルセの商談では研修の中身より先に、社内でどう通すかの相談を受けることが増えました。

この記事は、AI研修(生成AI研修)を社内の稟議に上げる担当者のために、稟議書に書く項目と記入例、少人数で始めて来期に広げる段階の切り方、決裁者に示せる効果の指標、助成金を使う場合の日程の逆算をまとめたものです。社内で通すことに話を絞っています。研修そのものの選び方は法人向けAI研修・DX研修の完全ガイドと生成AI研修の選び方に、研修会社の見積もりの比べ方は生成AI研修の相見積もり完全ガイドに、助成金の制度と計算はAI研修の助成金に書きました。重なるところはそちらへご案内します。

1. 結論:決裁者が見るのは「何に効くか・いくらまでか・どう確かめるか」

AI研修の稟議が止まる理由は、多くの場合、研修の良し悪しではありません。決裁者から見て、お金を出したあとに何が起きるかが読めないことです。「社員のAIリテラシーを高める」と書いても、どの仕事がどれだけ変わるのかが見えないため、ほかの投資と比べようがありません。

そこで、稟議書では次の3つが一目で分かるようにします。

  1. 何の業務に効くか:「AIを学ぶ」ではなく、「見積書の作成」「日報のまとめ」「手順書の作成」のように、受講者が毎月している仕事の名前で書く。
  2. いくらまで使うか:今回の費用と、来期に広げた場合の費用の見込みを分けて書く。助成金は審査で決まるので、予算は助成なしの額で確保する。
  3. 効果をどう確かめるか:研修の前と後で、何を・誰が・いつ測るか。いつ、誰が、続けるかを決めるか。
決裁者が見る3つのこと。AI研修の稟議で最初に整理する要点。何の業務に効くか(例:見積書・日報・手順書、業務の名前で書く)、いくらまで使うか(今回の費用・来期に広げた場合・助成金は別の行)、効果をどう確かめるか(測り方・判定日・報告日を決める)。数字を約束するより、測り方と判定日を書く
図1:決裁者が見る3つのこと(金額は記入の形を示す見本です)
効果の数字を約束するのではなく、「測り方」と「判定日」を約束する。数字は先行した人の実測で埋める。

この3つがそろうと、全社員分を一度に通すのが難しい会社でも、まず数名で確かめるという小さな稟議なら通しやすくなります。次の章で、実際の商談で聞いた例を並べます。

2. 商談で聞いた、AI研修の稟議の壁

2026年10月から11月初めにカトルセがお会いした企業のうち、予算と稟議の話が出た4件を、業種と規模だけにして並べます。

業種・規模商談で聞いた様子稟議で詰まっている点
非鉄金属メーカーの工場(約450名の事業所)各課のキーマンを育てて職場に広げたい。今期の予算は厳しいが、数名を先に受けさせる形なら通せる可能性がある。来期の予算も検討中。グループのシステム会社や他社とも比べている全員分の稟議は「投資対効果と研修の効果を示せるか次第」。始める前の水準と、効果の測り方がまだ整理されていない
医薬品メーカーの工場社内にDX推進の担い手の制度があり、受講する人の候補ははっきりしている。期が10月に始まったばかり今期の予算に研修費が入っているか分からない。予算は設備・システムの導入が中心。決裁者にまだ会えていない。導入の作業で人手が足りず、受講の時間を取れるか
空調設備の工事・保守(約23名)数名なら受講者を出せる、費用も問題ないという反応。社員に「AIで学びたいこと・効率化したい業務・困りごと・関心の度合い」を聞いてから決める誰が受けるか、どの職種の内容にするかが決まっていない
鉄鋼商社(約100〜300名)研修会社4〜5社を比べている。助成金を使う型は内容の選択肢が絞られるので、少人数のオーダーメイドのほうが身になりそう、という考えもある助成を使う案と使わない案のどちらにするか。比べた結果を決裁者に説明する形が要る

4件に共通するのは、研修を受けること自体には前向きなのに、「誰が・何のために・いくらで・どう確かめるか」が稟議の形になっていないことです。逆に言えば、ここを書類にできれば前に進みます。

3. AI研修の稟議書に書く7項目と、そのまま使える記入例

会社ごとに稟議の様式は違いますが、AI研修で決裁者が知りたいことは、だいたい次の7項目に収まります。様式に欄が無い項目は、「添付資料」として1枚にまとめて付けます。

項目決裁者が知りたいこと書き方のコツ
1. 目的何の業務を、どう変えたいのか業務の名前で書く。「リテラシー向上」だけで終わらせない。来期に広げる狙いがあれば一文足す
2. 対象者なぜこの人たちなのか部署と担当業務を並べる。研修の内容と受講者の職務が対応していることを示す(助成金を使う場合は特に大事)
3. 内容何を学び、何を持ち帰るのか形式・時間・日程と、演習の題材にする自社の業務。カリキュラム表を添付する
4. 費用いくらで、ほかに何がかかるのか受講料×人数、交通費などの付帯費用、受講中の人件費。助成金の見込みは別の行に書き、予算は助成なしの額で取る
5. 効果の測り方どうなったら成功で、いつ分かるのか研修前の水準を測る日、研修後に測る日、測る指標、報告する場と日付(5章)
6. リスクと対策失敗したら何が起きるのか情報の扱い、受講時間の確保、使われないまま終わる、助成が不支給になる、のそれぞれに対策を1行ずつ
7. 比較した他の選択肢ほかの方法と比べたのか他社の研修だけでなく、eラーニング、社内で教える、見送る、も並べて、本案を選んだ理由を書く(6章)

あわせて、日程(研修の開始日・助成金を使うなら計画届の提出日・この稟議の決裁希望日)と、次の判断(いつ、何を見て、続けるかを決めるか)を末尾に書いておくと、決裁者が「この稟議で何を決めればよいか」を迷いません。

記入例:製造業の工場で、事務と現場管理の5名が先に受ける場合

次の例は、商談でよく伺う状況をもとにカトルセが作った書き方の見本です。金額や日付は空けてあるので、自社の数字を入れてお使いください。

件名:生成AIの業務活用研修(先行5名)の実施について

目的
事務課と製造課で毎月作っている見積書・日報・作業手順書の作成に生成AIを使い、作成にかかる時間を減らす。あわせて、来期に各課へ広げる際に職場で教える役を担う人を育てる。
対象者
事務課2名(見積書・納品書の作成担当)、製造課3名(日報のまとめ・作業手順書の作成担当)。いずれも研修で扱う業務を担当している社員。
内容
職種別の生成AI研修(ライブ形式・計◯時間・◯日に分けて実施)。演習の題材は、上記の担当業務で実際に使っている書類(社外秘の情報は伏せた見本を使う)。カリキュラム表を添付。
費用
受講料 ◯◯円(税抜)×5名=◯◯円。付帯費用(会場・交通費)◯◯円。助成金を申請する場合の見込み額は◯◯円だが、支給は労働局の審査で決まり、研修後の申請を経て支給されるため、予算は助成なしの額で確保する。
効果の測り方
研修前の2週間と、研修後30日・90日の時点で、①対象書類1件あたりの作成時間、②AIを使った日数(週あたり)、③作った指示文・ひな形の数、④上長による差し戻しの回数を記録する。◯月◯日の課長会で結果を報告する。
リスクと対策
情報の扱い:会社が許可したAIだけを使い、入力してよい情報の範囲を研修前に決める。受講時間:繁忙期を避けて日程を組み、上長が当日の業務を調整する。使われないまま終わる:研修後30日目に振り返りの場を設ける。助成の不支給:予算は全額で確保しているため、事業への影響はない。
比較した選択肢
A:職種別のライブ研修(本案)、B:少人数のオーダーメイド研修(助成は使わない)、C:eラーニング、D:社内の詳しい社員が教える、E:今期は見送る。自社の書類を題材に演習でき、効果を業務の数字で測れることから、Aを選んだ(比較表を添付)。
日程
研修開始:◯月◯日。計画届の提出:◯月◯日まで(助成金を使う場合)。本稟議の決裁希望日:◯月◯日。
次の判断
◯月◯日に効果を報告し、来期に各課のキーマン◯名へ広げるかを決める。広げる条件:①の作成時間が減っていること、5名中◯名以上が週◯日以上使っていること。

ポイントは、「次の判断」の欄で来期の稟議を先に予告していることです。決裁者は今回の金額だけで判断せずに済み、担当者は来期の稟議で「先行の結果」を根拠に使えます。

稟議に添える資料と見積もりが必要な方へ

研修のカリキュラム表や見積もりなど、社内の稟議に添える資料のご相談を承っています。今期は少人数で始める案、来期に広げる案のどちらの段階でも構いません。

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4. 「今期は少人数で先行、来期に広げる」段階の切り方

今期は少人数、来期に広げる。先行5名で測り、結果を次の稟議につなげる。STEP1 第1段(今期)先行5名:同じ職務の数名で受講、研修前→30日→90日で記録。STEP2 第2段(来期)各課のキーマンへ:先行結果を根拠に予算化、職務ごとに内容を選び直す。STEP3 第3段(その後)職場で教えて広げる:キーマンが相談役、業務別の型を配る。先行の稟議で「来期に広げる条件」まで予告しておく
図2:今期は少人数で先行し、来期に広げる3段の進め方

今期の予算が無い、または全員分の費用を一度に通せないとき、カトルセが商談でお勧めしているのが、3段に分けて進める形です。これは商談で提案している進め方で、効果を測った実績を示すものではありません。

第1段(今期)

先行:同じ職務の数名で受けて測る

測れる業務を持つ人を選び、研修と90日の記録をセットにする。稟議に「来期に広げるかを決める日と条件」を書く。

第2段(来期)

各課のキーマンへ広げる

先行の結果を根拠に来期の予算を取る。職務ごとに内容を選び直し、先行メンバーが社内の相談役を担う。

第3段(その後)

職場で教えて広げる

キーマンが職場で業務別の型を配る。研修を足す前に、使っている人と使っていない人の差を見る。

先行する数名の選び方

  • 同じ職務か、多くても2つの職務にそろえる:職務がばらばらだと演習の題材も効果の指標もばらばらになり、少人数では結果を説明できません。
  • 毎月くり返す、測れる業務を持っている人:見積書・日報・報告書・手順書のように、件数と作成時間が数えられる業務がある人を選びます。
  • 来期に職場で教える役を担える人:先行メンバーは来期の「社内の相談役」になります。AIに詳しい人である必要はなく、職場で頼られている人のほうが広がりやすいです。各課のキーマンの育て方は生成AI社内推進リーダー・社内講師の育成もご覧ください。
  • 本人が受けたいと思っている人:約23名の会社のように、先に社員へ「学びたいこと・効率化したい業務・困りごと・関心」を聞いてから選ぶと、対象者の欄の理由がそのまま書けます。

来期の予算の時期に、先行の結果を間に合わせる

見落としやすいのが、来期の予算を組む時期です。期が4月に始まる会社では、来期の予算は年明けから3月までに固まることが多く、2〜3月に受けた先行の結果は「研修直後」の分しか間に合いません。この場合は、先行の稟議の中で「来期に◯名分の枠を仮で取り、先行の90日の結果で確定する」と書いておくと、予算の締め切りに追われずに済みます。期が10月に始まる会社なら、今期中に受けた先行の90日の結果を、来期の予算づくりにそのまま使えます。

研修の内容は、職種ごとに分かれている講座から選ぶと、来期に別の職務へ広げるときも同じ考え方で稟議を書けます。カトルセの法人向け生成AI研修は職種別AI研修シリーズとして講座ごとに対象職務を示しています。DX推進の中心になる人を先に育てる場合は、生成AIの業務活用とDifyでの社内ツールづくりを2日間で扱う最新AI活用研修+AIツール開発基礎(14時間)もあります。

5. 効果の示し方:研修前後で測れる指標

稟議で「効果は?」と聞かれたときに、満足度のアンケートだけでは答えになりません。決裁者が知りたいのは、仕事がどう変わったかです。少人数の先行なら、次のような指標を研修の前と後で測れます。

指標測り方いつ測るか
作業時間対象業務1件あたりの作成時間を、本人が記録表に書く(開始と終了の時刻)研修前の2週間と、研修後30日・90日
使用頻度週に何日AIを使ったか。社内で使っているAIの管理画面に利用状況が出るなら、それも使う研修後、毎週
成果物の数業務で使える指示文(プロンプト)、ひな形、手順書をいくつ作り、共有したか研修後30日・90日
品質上長による差し戻し・修正の回数、記入漏れの数研修前の2週間と、研修後90日
広がり先行メンバーが職場で教えた回数、職場で使い始めた人の数研修後90日

研修の前を測っていないと、後で何も比べられません。稟議が通ったら、研修の日を待たずに記録を始めます。研修後90日の進め方と、利用状況の差の埋め方はAI研修が定着しない理由|研修後90日のロードマップに、効果測定の3段階(理解度・利用状況・業務成果)は生成AI研修の選び方にまとめています。

投資対効果は「式」を書いて、数字は後で埋める

投資対効果を聞かれたら、稟議書には次のような式を書き、見込みの数字には「先行の実測で置き換える」と添えます。

  • 浮く時間の見込み=(研修前の1件の作成時間 − 研修後の1件の作成時間)× 月の件数 × 人数
  • 金額にすると= 浮く時間 × 自社の時間あたりの人件費
  • 比べる相手= 研修の費用(受講料+付帯費用+受講中の人件費)

たとえば1人が週に1時間短くできれば、年に約50時間(週1時間×約50週)です。ここに自社の人件費の単価と人数を掛ければ、決裁者が比べやすい形になります。ただし、どれだけ短くなるかは業務と人によって違うので、見込みの数字を断定しないことが大事です。稟議で約束するのは「この式で、この日に、実測の数字を報告する」ことです。

効果の欄で避けたい書き方
  • 「業務効率が◯割上がる」と、根拠のない数字を先に書く(来期の稟議で突かれます)
  • 「AIの利用回数」だけを目標にする(使うこと自体が目的になります)
  • 測る人と報告の日付を決めない(誰も測らないまま90日が過ぎます)

6. 比較表の軸:他社の研修と、ほかの選択肢をどう並べるか

決裁者からは「他社とは比べたのか」「研修でなくてもいいのでは」と聞かれます。稟議には、ほかの方法も含めた比較表を1枚付けると話が早くなります。

選択肢自社の業務を題材にできるか助成金効果の測りやすさ向いている場面
A. 職種別のライブ研修できる(受講者の職務に合わせた演習)要件を満たせば活用を検討できる測りやすい(業務がそろっている)同じ職務の数名で先行し、来期に広げたい
B. 少人数のオーダーメイド研修できる(内容を自由に組める)使わない前提で組むことが多い測りやすい助成の要件に合わせるより、内容を優先したい
C. eラーニングしにくい(共通の教材が中心)2026年8月3日以降の計画届から、同じ人は1年度に1回まで。職務に直結しない汎用的な内容は対象外受講の記録は残るが、業務の変化は別に測る全員に最低限の知識をそろえたい
D. 社内で教えるできる外部の受講料はかからない(助成の扱いは要件しだい)教える人しだい社内に詳しい人と教える時間がある
E. 今期は見送る———予算と時間が取れない。ただし来期に助成の条件が変わる可能性がある(7章)

鉄鋼商社の例のように、AとBで迷う会社は少なくありません。どちらが良いかは会社によって違うので、稟議には両方の費用(助成を使う場合と使わない場合)と、選んだ理由を並べておくと、決裁者が判断できます。

研修会社どうしを比べるときは、金額より先に「含まれる範囲」をそろえます。稟議の比較表に入れておきたい軸は次のとおりです。

  • 題材:自社の業務を事前に聞いて演習の題材にするか、共通のサンプルか
  • 形式と時間:ライブか録画か、合計の時間、何日に分けられるか
  • 人数:最少人数、少人数のときの費用の扱い、来期に人数を増やしたときの扱い
  • 研修後:受講後に使われているかを確かめるか、振り返りの場があるか
  • 費用の内訳:受講料に含まれるもの、追加になる条件
  • 助成金:受講者の職務と研修内容の対応を書類で示せるか

7つの比較ポイントの詳しい見方と、研修会社にそのまま送れる質問リストは生成AI研修の相見積もり完全ガイドにあります。

7. 助成金を使うなら、期限から逆算して「年内に決めること」

助成金を使うなら年内に決めること。計画届は訓練開始日の6か月前〜1か月前まで。研修開始2027年1月15日→計画届2026年12月15日まで→決裁の目安12月前半。2月1日開始→計画届1月4日まで→年内。2月15日開始→1月15日まで→12月中。3月1日開始→2月1日まで→1月前半まで。決裁前の確認リスト:決裁者、受講者と担当職務、研修会社・内容・見積もり、社内体制、来期分は助成なしでも成り立つ金額
図3:計画届の期限から逆算した決裁の目安(決裁の目安はカトルセの考え方で、制度上の期限ではありません)

AI研修でよく使われる人材開発支援助成金の事業展開等リスキリング支援コースは、厚生労働省のパンフレットで令和4年〜8年度の期間限定の助成金とされています。令和8年度の終わりは2027年3月31日です。助成金を使うなら、今期の予算であっても3月末までに研修を終える日程を組むことになります。

日程を決めるのは、計画届(職業訓練実施計画届)の期限です。支給要領では、提出期間は訓練開始日の6か月前から1か月前までとされています。計画届には研修の内容・日程・受講者を書くので、それまでに研修会社と内容を決め、受講者と担当職務を整理しておく必要があります。職業能力開発推進者の選任なども、計画届を出す日までに済ませます。つまり、稟議の決裁は計画届よりさらに前に要ります。

研修の開始日(例)計画届の期限(制度)稟議の決裁の目安(カトルセの考え方)
2027年1月15日(金)2026年12月15日(火)12月の前半。決裁のあと、契約と書類の準備に時間が要る
2027年2月1日(月)2027年1月4日(月)※1か月前の1月1日が閉庁日のため翌開庁日年内。12月29日〜1月3日は労働局が閉まり、社内も休みに入る
2027年2月15日(月)2027年1月15日(金)12月中。遅くとも年明けすぐ
2027年3月1日(月)2027年2月1日(月)1月の前半まで

商談で「1月に実施するなら12月中の決裁」「2月に実施するなら年内に判断」とお伝えしているのは、この逆算からです。右の列は、決裁から計画届までの準備にかかる時間を見込んだ目安で、制度上の期限ではありません。期限の日が土日・祝日・年末年始に当たる場合の扱い、年度末に近い日程の注意、1月からの逆算表の全体はAI研修の助成金【2026年11月】の「1月からの逆算表」をご覧ください。年度内に何を終えていればよいかは公式資料に明記が無いため、年度末に近い日程は計画届の前に管轄の労働局へ確認してください。

年内に決めることのチェックリスト

  1. 自社が中小企業か大企業か:助成率と上限が変わります。判定の仕方は人材開発支援助成金は中小企業か大企業かへ。
  2. 決裁者と、決裁にかかる日数:決裁者に会えていない、出張が多い、といった事情は日程にそのまま響きます。決裁者に説明する日を先に押さえます。
  3. 受講者と担当職務:8月3日の改正で、研修内容に沿って受講者を選んでいるかが見られるようになりました。受講者ごとに担当職務を書き出します。
  4. 研修会社・内容・日程・見積もり:計画届に書く内容と日程を決めるため、カリキュラム表と見積もりを先にそろえます。
  5. 社内の体制:職業能力開発推進者の選任と、事業内職業能力開発計画の作成・社員への周知を、計画届を出す日までに済ませます。

来期の稟議では「助成が同じ条件で続く」と書かない

来期に広げる稟議では、今期と同じ助成率を前提にしないことが大事です。厚生労働省の令和9年度の概算要求の資料では、人材開発支援助成金は「訓練実施コース」として示され、一般訓練の経費助成率は中小企業45%です。来年度の扱いはまだ確定していないため、来期分は助成なしでも成り立つ金額で書き、助成は「使えれば下がる分」として別の行に置くのが安全です。詳しくはAI研修の助成金の「2027年度以降はどうなる?」にまとめています。

8. 受講者が少人数のときの注意

「まず5名で」と決めたあとに、受講者が4名、3名と減ってしまうことがあります。少人数で始めるときは、次の点を先に確かめておきます。

  • 研修会社の最少人数:最少人数は研修会社や形式によって違います。カトルセの研修も最少人数は形式によって変わり(研修の導入事例のよくある質問に記載)、たとえば14時間の講座は最低受講人数を5名としています。人数が足りないときに、他部署の同じ職務の人を足す、時期をずらす、形式を変える、のどれができるかを見積もりの段階で聞いておきます。
  • 助成は1人ずつ判定される:支給要領では、対象になる受講者は、事業所で雇用保険の被保険者であり、研修の期間中も被保険者であること、ライブ形式なら研修時間の8割以上に出席していることとされています。少人数では、1人の欠席や、雇用保険に入っていない役員の参加で、助成の対象人数がすぐ減ります。役員や家族の扱いはAI研修の助成金の「研修を受ける人の条件」へ。
  • 欠席に備えた日程:出席の8割を割らないよう、繁忙期を避け、上長が当日の業務を調整することを稟議の「リスクと対策」に書いておきます。
  • 効果は平均より1人ずつ:5名の平均は1人の結果で大きく動きます。稟議の報告では、1人ずつの研修前後を並べるほうが、決裁者に伝わります。
  • 先行メンバーが抜けたとき:先行メンバーは来期の相談役でもあります。異動や退職で抜けた場合に、誰が記録と報告を引き継ぐかも決めておきます。

9. カトルセの支援:稟議に書く材料から一緒に整える

稟議書そのものは、社内の様式で担当の方が書くものです。カトルセがお手伝いできるのは、その材料づくりです。以下は商談で提案している進め方です。

  • 研修:職種別AI研修シリーズ(全10講座・各11時間)。受講料は全講座共通で1名あたり36万円(税抜)。ライブ形式(対面/オンライン同時双方向)のため人材開発支援助成金の活用をご検討いただけます。支給の可否は都道府県労働局の審査で決まります。申請手続きは社会保険労務士の独占業務のため、必要な場合は提携社労士をご紹介します。講座の一覧と対象職務は法人向け生成AI研修をご覧ください。
  • 稟議の材料:カリキュラム表、受講者の職務と研修内容の対応、効果の測り方(記録表の項目)を、貴社の業務に合わせて一緒に整理します。研修の前に業務の場面を伺い、演習の題材を決めます。
  • 負担の試算:助成を受けた場合の負担は、研修費用シミュレーターで研修プラン・企業規模・人数から試算できます。
  • 来期に広げるとき:先行の結果の見直しや、各課への広げ方をAI顧問として一緒に進めることもできます。

よくある質問

AI研修の稟議書には何を書けばよいですか?

目的・対象者・内容・費用・効果の測り方・リスクと対策・比較した他の選択肢の7項目を書きます。目的は「リテラシー向上」ではなく受講者が毎月している業務の名前で書き、末尾に日程と、いつ何を見て続けるかを決めるかを添えると、決裁者が判断しやすくなります。

研修の効果は、稟議の段階でどう示せばよいですか?

効果の数字を約束するのではなく、測り方と判定日を書きます。研修前の2週間と研修後30日・90日に、対象業務1件あたりの作成時間、AIを使った日数、作った指示文やひな形の数、差し戻しの回数を記録し、報告する日を決めます。投資対効果は式を書き、数字は先行した人の実測で埋めます。

今期の予算が無い場合、どう進めればよいですか?

同じ職務の数名で先に受けて効果を測り、その結果を来期の予算の根拠にする方法があります。先行の稟議に、来期に広げるかを決める日と条件を書いておきます。期が4月に始まる会社は、来期の枠を仮で取り、先行の結果で確定する形にすると予算の締め切りに間に合います。

助成金を使う場合、いつまでに決裁が必要ですか?

計画届の期限は訓練開始日の6か月前から1か月前までで、計画届の前に研修の内容・日程・受講者を決めておく必要があります。1月中旬に始めるなら12月の前半、2月初めに始めるなら年内に決裁を終えるのが目安です。これは制度上の期限ではなく準備の時間を見込んだ目安なので、年度末に近い日程は管轄の労働局に確認してください。

受講者が5名に満たない場合はどうなりますか?

研修会社の最少人数は形式によって違うため、見積もりの段階で確認してください。助成金は受講者1人ずつ判定され、雇用保険の被保険者であることや研修時間の8割以上の出席が条件です。少人数では1人の欠席や役員の参加で対象人数がすぐ減るので、日程と受講者の選び方に余裕を持たせます。

稟議の「内容」欄を書く前に

営業・人事・経理・現場など職種ごとの講座と、講座ごとの対象職務・時間・形式を載せています。受講者の職務と研修内容を対応させるときの材料にお使いください。

研修の内容を見る →

まとめ ── 測り方と判定日を約束し、数字は先行で埋める

  1. 決裁者が見るのは3つです。何の業務に効くか、いくらまで使うか、効果をどう確かめるか。業務の名前で書き、助成金は別の行に置きます。
  2. 稟議書は7項目です。目的・対象者・内容・費用・効果の測り方・リスクと対策・比較した他の選択肢に、日程と次の判断を添えます。
  3. 今期は少人数で先行します。同じ職務の数名で受けて90日測り、その結果を来期の予算の根拠にします。先行の稟議で来期を予告しておきます。
  4. 助成金を使うなら年内が勝負です。計画届は開始日の1か月前まで。1月に始めるなら12月の前半、2月初めに始めるなら年内の決裁が目安です。来期の稟議は助成なしでも成り立つ金額で書きます。

自社のAI活用がいまどの段にあるかを先に確かめたい方は、生成AI活用レベル診断(無料)をお試しください。稟議に添える資料や、先行する人の選び方のご相談はお問い合わせからどうぞ。

参考(厚生労働省の公式資料)

※ 本記事は2026年11月7日時点の情報にもとづいています。助成金の内容(コースの期間、計画届の提出期間、対象になる受講者の条件、2026年8月3日の改正の内容、職業能力開発推進者の選任など計画届の前に済ませること、支給申請日までに訓練経費を全額負担すること、令和9年度の概算要求の内容)は、2026年11月7日に上の「参考」に挙げた厚生労働省の公式資料で確認したものです。計画届の期限の曜日と閉庁日の扱いは、2026年11月1日に公式資料で確認したAI研修の助成金の逆算表と同じ内容です。「稟議の決裁の目安」は準備の時間を見込んだカトルセの考え方で、制度上の期限ではありません。支給の可否は都道府県労働局の審査で決まります。最新の要件は、厚生労働省の支給要領と管轄の労働局でご確認ください。商談で伺った声は、企業が特定されないよう業種と規模だけにし、金額は載せていません。稟議書の記入例、段階の切り方、効果の測り方はカトルセが商談で提案している内容で、効果を測った実績を示すものではありません。

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SUPERVISOR / 監修者

この記事の監修者

K.H

橋本 健太郎

株式会社カトルセ 代表取締役

生成AI研修・AI開発・AI顧問・PM/PMO支援を提供。累計2,000名以上のAI研修を支援し、大手企業の生成AI活用、ローカルLLM/RAG/AIエージェント導入、業務改善プロジェクトに携わる。実務に直結する「使えるAI活用」を一貫して伝えている。